治療の実際

 矢印が示す歯がインプラントです。入れ歯の様に金具や歯ぐきのプラスティックがなく、ブリッジのように隣の歯を削ることもありません。あたかも歯が帰ってきたかのような感覚です。

 インプラントの成功率は研修を積み、適切と考えられる状態で行っても約98%とされています。つまり、少なからず失敗例があるということであり、原因は様々です。当クリニックのドクターが今まで成功率を高く維持している理由は、医療費などの問題は無くても危険要因がなくなるまで治療をお断りしていることが大きいと考えています。最近はインプラント周りの清掃状況が悪くてもあまり問題は無いことが報告されており、原因は他にあるといえます。

 まず診断が重要となります。10mm以上の歯を支えるのに7mm位の長さのインプラントでは無理が出やすいため、十分な骨の量と質を確認しなければなりません。それを確認するには時に通常のレントゲンでは限界があり、CT撮影を必要とする事もあります。判りやすく言うと地盤調査なし、または不十分な基礎で家を建てられないのと同じということです。

CTの撮影データを元に三次元モデルを構築し、インプラントのシミュレートを行います。安定を得るための必要な移植骨の量や角度などを計算します。つまり担当医は実際の患者様に手術をする前に、同じ手術を事前に行っているようなもので、確実性を大きく上げる事となります。

 さらに、コントロールが不十分な糖尿病を患っている患者様や、ステロイドを長期服用されている患者様、ヘビースモーカーなどの場合は成功率が低く、状態が改善されるまで手術をお断りしています。改善されない状態で手術をすれば、失敗の可能性が高くなるだけでなく、逆に周囲の貴重な骨を失う危険性もあり、改善された後にインプラントそのものが不可能となり得ます。
 またインプラントは噛む為の治療ですが手術が必要な以上、清潔な環境が必要です。清潔を管理できる部屋で完全に滅菌された器具を用いなければなりません。お体に入れるインプラントに細菌や、油が混入されれば、インプラントは骨とつかず、失敗します。

 最後に適切な本数と長さと歯の設計に無理があると、インプラント手術が適切でもいずれ抜け落ちてしまう事があげられます。これは、院長が博士号を取得するときに研究した内容でもありますが、1本のインプラントが支えられる力には限界があり、それを超える過大な力がかかるとインプラントは骨から剥がれる危険性が高いというものです。 したがって誤った設計も失敗につながる為、インプラントの長さと太さ、付ける歯の大きさや負担量をしっかり考慮した治療が必要となります。

 このほかにもポイントはいくつも挙げられますが、考えられる安全性の確保が第1優先となります。

 院長はコンピュータシミュレーションで骨とインプラントに加わる力を三次元計算し、無理の無い安全な設計法を検討し、それが認められて博士号を取得しました。そして現在でもそれは臨床に応用されています。

インプラント手術の実際

 インプラントの手術は清潔さが絶対条件。閉鎖された個室の手術室(特別診療室)で舞うチリも制限し、お腹などの手術と同じように滅菌されたガウンを着て、滅菌された器具を使って行われます。患者様のお体の上にも滅菌されたシートを敷き、細菌の侵入を防ぎます。

あらかじめレントゲンにて骨の厚みを診査します。

厚みにあわせたインプラントを埋入します。
 ご好意でホームページの掲載にご協力いただきましたこちらの患者様は、77歳の男性で心臓に持病があり、休薬出来ない血行を向上させる薬の内服がありました。したがって心電図等を監視しながら短時間の手術を要しました。以前より入れ歯が不安定であることを気にされていたため、まず2本のインプラントで入れ歯を安定させ、希望と力学的条件にあわせて本数を増やし、固定性の人工の歯に変えていく予定です。
 この手術で用いたインプラントは、患者様の骨の質に合わせてNobelBiocare社製のReplace Select Taperd を選択しました。これも当クリニックで10年保障の対象としている種類のものです。
 術後の症状は痛み止めが十分効果し、押されたときの痛みを若干感じるものの腫れはありませんでした。

 3ヵ月後に2回目の手術を行い、入れ歯側に凹み、お口側に出っ張りの金具をつけます。洋服のボタンと同じように自分で取り外しができ、かつ食事中は安定した総入れ歯になります。いればの安定にお悩みの方に、治療費を抑えた方法です。現在ではもっと異物感の少なく、メインテンスの容易なものに変わっています。

 上の写真のように、安定のためしっかり本数を埋入し、被せ物を白くない歯にして医療費を抑える方法もあります。メスを使用するとどんなに綺麗な被せものをしても傷が残るため、当クリニックではレーザーによるインプラント手術を行っています。

 上の写真のように、骨が少なくなっても骨の移植をせずに、たった4本のインプラントで多くの歯を取り戻すALL-ON-4という非常に高度な技術を必要とする手術も行っています。治療費抑えたい場合や、移植ができない場合に行います。角度や長さ位置の僅かなズレも許されないため、CT撮影を必要とします。骨がないからと断られた過去がある場合は、是非ご相談ください。
 当クリニックでは安心のブランドのインプラントを、可能な限り多くの患者様に体験いただきたく、1本あたりの治療費という設定はしていません。予算に合わせて手術方法や被せ物などを一緒に検討し、納得できる治療を探し、実行しています。(治療費の項目参照)

 治療の種類にもよりますが、最もお勧めできるNobelBiocare社製インプラントを1本だけ行い、スタンダードな陶材焼付冠(白い人工の歯)で歯を作った場合 \433,260(込)となります。本数が多いほど1本あたりの治療費は下がります。また、BBC社製のインプラントをご選択いただき、金属冠を用いた場合は\317,700(込)となります。詳しくは治療費のページ、またはクリニックへご相談ください。